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2008年09月25日
巣立ちのとき
「14年間は本当に幸せだった。プロに入って50年。いい人生を歩ませてもらった。一つの道にどっぷりつかって、心をときめかせて幸せだった。」
68歳にしてなおも、野球に「心ときめく」、その気持ちにも、その表現が出てくる感性にも脱帽だ。
14年間の監督生活。
近年では稀にみる長期政権。
平均的なプロ野球選手の選手寿命よりも長い歳月を、王さんは監督として福岡で過ごし続けた。
その間には、恭子夫人を亡くし、王さんを福岡に呼んだ根本さんも中内さんも亡くなった。
14年というと、自分の人生に置き換えて考えても人生の1/3以上を占める。自分が社会に出てから16年だから、ほぼそれと歩みを同じくする長い時間。
若いファンなら、それこそ物心ついた頃からHawksの監督は王監督。
「福岡Hawks=王監督」という図式が脳内で自然に成立していたとしても全く不思議ではない。
思い起こせば、本当に様々なことがあった。
それを、ここでいちいち取り上げはしない。
が、その良いことも悪いことも全てひっくるめて、王さんは
「本当に幸せだった。」
と言ってくれる。
福岡のファンとして、こんなに嬉しい言葉はない。
王さんには、稀に見る貴重な体験をさせて貰った。
万年Bクラスのチームが、選手達が、負ける悔しさを覚え、勝つ歓びを知り、戦う集団へと変貌を遂げ、一つ勝つ毎に、逞しく、強かに成長していく様を見守ることができたのは、野球ファンとしてこの上ない歓びだ。
王さんの監督としての最大の強みを一つ挙げるなら、他の誰よりも強く抱く勝つことへの飽くなき執着心。それに尽きるだろう。
そして、そのスッと真っ直ぐに伸びた背中からは、人間としての在り方を教えて貰った。
それとともに、福岡から発するパ・リーグの新時代の息吹を日本の何処よりも早く感じさせて貰った。
今、思い返しても、本当に様々な出来事が走馬燈のように蘇ってくる。
その一つ一つが、一野球ファンとして、一福岡人として、そして一人の人間としての貴重な想い出であり宝物だ。
自分たちこそ、幸せだった──。
本当に心の底から、そう思える。
王さんから貰ったものの大きさを考えれば、どれだけの感謝の言葉を並べても、決して言い表せはしない。
でも、言わずにはおれない。
ありがとう、王さん。
そう遠くない日に、いつかはこんな日が訪れる──。
分かっていたことだ。
頭では分かってはいても、感情は別。
この言いようのない気持ち。あふれ出す想い。
王さんの身体のことを思えば、気が気ではなかったこの2年間。
自分の親父も胃を摘出しその後の状態を知るだけに、術後半年での現場復帰には驚きもしたし、その労苦は想像がつく。少なくとも親父は普通に働ける状態ではなかった。
王さんのその身体を思うと、ホッとする。しばらくは本当にゆっくりと静養していただきたいと思う。
だが、その安堵感の裏側で、もう王さんのユニフォーム姿を見れないかと思うと、もの凄く強烈な寂寥感に襲われる。
王さんは、常にアグレッシブで、野球への情熱に真っ直ぐな人。ご本人も野球無しでは生きていけないはず。
仰木さんの訃報に際しては「グランドで、ユニフォームを着て死ねるなら自分も本望。 」と仰った。手術を終え退院の際には「私には野球しかない。どういう形であれ野球とともに生きたい。」とも仰っている。
自らユニフォームを脱ぐ、その決断が簡単なものであったはずがない。
退任会見──。
王さんの晴れやかな顔が印象的だった。

本当に肉体的に苦しかったことは想像に難くない。特に夏場以降はほぼ毎試合点滴を受けて臨んでいたとも聞く。そして、この9月のチームの大失速を目の当たりにして思い悩んだに違いない。
が、何故、まだ順位が確定していない、CS出場への一縷の望みに賭けて戦うべきこの時期の発表なのか。
いくら本拠地での最後のゲームを前にしているとはいえ、王さんの本来の考え方なら、この時期にこんな発表はするまいに…
が、会見を見て思った。
もう、王さん自身が本当に戦える状態になかったのだな、と。
「監督生命を懸けて…と話したことで、かえってプレッシャーをかけてしまった。それが、いまとなっては一番の反省点。」
「今は選手やチームの大きな転換期。生まれ変わり、本来の道筋に戻るには、監督交代はなくてはならない。」
チームの転換期──。
今季、終盤の大失速に、実は自分も同じことを考えていた。
「今年を最後のつもりでやる。」
そう宣言していた王さんだが、今季の不甲斐ない成績にもう1年やるかも知れない、などと勝手に考えていた。
だが、王さんの身体のためにも、チームが生まれ変わるためにも、もう王さんは今季限りでユニフォームを脱いだほうがいいのではないか、そうも感じていた。
今のHawksは移籍組を除けば、監督を王さんしか知らない、王さんの指揮下でしか戦ったことのない選手がほとんど。もう一回り大きくなるためには、そろそろ王さんから巣立つことも必要ではないか、などと思っていた。
自分は、なんて身勝手なファンだろう。
冷静にそんなことを考えていたクセに、いざ、それが現実のものとなると、ひどく狼狽し募る気持ちを抑えきれない。
寂しさ。切なさ。悔しさ。安堵感。不安感。そして、感謝の念。
いろんなものが入り交じって、簡単に言葉にさせてくれない。
理性では「ご苦労さまでした。少しゆっくり身体を休めてご自愛ください。」と思ってはいても、同時に、心にポッカリと大穴があいてしまっている。
だが、そんなファンの胸の内を見透かしたかのように王さんはこうも言ってくれた。
「何で九州の人、福岡の人はこんなに温かいんだろう、と私生活を含めて本当に幸せな14年間でした。
第2の故郷である福岡、野球人生の中で大きな割合を占めるホークスを思う気持ちはますます強くなると思う。私の力でできることは、100%の力を出し切って行きたいと思う。」
福岡を「温かい」といい「第2の故郷」と呼んでくれる。福岡のファンにはそれだけでも涙もの。
今後も福岡を拠点にしながら、何らかの形でHawksの運営にも携わっていくというのは福岡のファンにとっての救いだ。
ファンは、王さんのこれほどまでのお気持ちと14年間の恩に報いるためにも、これからも福岡の、九州のチーム、Hawksを盛り立て、応援していかねばなるまい。
福岡ドーム、最終戦。
残念ながら、息子達の気合いは空回り。
最高の笑顔の、目を輝かせたあの親父のガッツポーズを、最後に見ることは叶わなかった。
試合後のセレモニー。
王さんが挨拶をする、その後ろで、信彦がポロポロ泣いている。小久保もジッとうつむき悔し涙をにじませている。和巳は決して表情を崩すまいと口を真一文字に結んでいる。大村が今にもこぼれ落ちそうな涙を流すまいと上を向いている。多村も何度も目を拭っている。
花束を渡しながらもその涙が止まらない「息子」達。
そう、こうしていると、まるで本当に親子のようだ。実の子は、娘ばかりだった王さんが、福岡に来て息子を得たんだな、としみじみ思う。
こんなにも選手達に愛され慕われた監督が他にいるだろうか──。
こんな選手と監督との関係が他にあるだろうか──。
スタンドも皆泣いている。
場内を一周する、その最中ですら、涙の止まらぬ小久保に信彦。
小久保が声をかけマウンドに集まる選手達。
王さんの最期の胴上げ──。
2003年の胴上げ時に比べると15kgも軽くなった親父が、4度、宙に舞った。

もう、この世界一美しい胴上げを見ることもない。
本当は勝って胴上げをして終わりたかった。
選手達にとっては、そんな悔恨の念を抱えながらの胴上げだったに違いない。その悔しさを、来季以降の糧にして欲しいものだ。
選手も、ファンも、涙、涙に包まれた福岡ドームの真ん中で、最期まで穏やかな優しい笑顔の王さん。
そういえば──。
王さんは、その現役選手としての引退では長嶋監督解任騒動の煽りを受けた形で、公式戦でファンに挨拶する機会すらなかった。あれほどの比類無き実績にも関わらず、シーズン中には引退試合もセレモニーすらも行われなかった。
だから、今回、ファンに挨拶する機会を、こうして別れを惜しむ機会を、ちゃんと用意してくれた球団には感謝したい。
さ、息子達。
もう来季からは親父はグラウンドにはいない。
いついかなるときも支えてくれた親父、苦しいときにアドバイスを与えてくれた親父、常に目をまん丸にして叱咤激励してくれた親父、何処までも貪欲に技術を追求し勝利を追求した親父、何があろうと息子達を守り続けて来た親父の姿はもうグラウンドにはないのだ。
息子達にとっても、本当の巣立ちのときだ──。
親父の築いた良き伝統と常勝チームの礎を、さらに堅固なものにするのも、壊すのも、今後の君達次第だ。
親父の14年間の戦いを、決して、無にするな。
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Comments
私も一緒に言わせてください。
「王さん、ありがとう。」
27日の千葉マリンは私も球場に行こうと思います。
精一杯の声と心で、この言葉を伝えようと思います。
HiROさん、いつもありがとうございます。2度目のコメントです。
投稿者 所沢のホークスファン : 2008年09月25日 18:38
所沢のホークスファン さん
ふふ、コメント、たぶん3回目だと思いますよ♪
27日の千葉マリンは、関東のHawksファンが王さんとの別れのために大挙して集まりそうですね。
私も悔いのないよう、万感の想いを届けてこようと思います。
もし、差し支えなければ、一度くらいご挨拶させてください♪
当日、自分はレフトスタンドにいます。
そこで、南海ユニと平和台時代のダイエーユニの集団に「HiROさんは?」とお声掛けいただいても結構ですし、このブログトップページ右サイドバーの自分の写真下のe-mailに連絡先を頂いても結構です。
無理に、とは言いませんので、気が向いたら、で結構ですので、よろしくお願いします♪
投稿者 HiRO@zetton05 : 2008年09月26日 02:12
初めまして。いつも楽しく読ませていただいてます。
楽天の本拠地、仙台ででホークスファンをしています、かんけと申します。
読みながら思い出して感動してしまい、泣きそうになってしまいました。
10/7、王さんの最終戦は仙台ですので、参戦のつもりです。
全国のファンの想いを乗せて「王さん、ありがとう」を精一杯伝えようと思います。
王さんの息子さん達には最後の打ち上げ花火を盛大にお願いしたいものです。
ホークスファンとしてはまだ若輩者ですが、今後ともよろしくお願いします。
投稿者 かんけ : 2008年09月26日 15:22
いつも楽しく拝読しております。
もび@鹿児島です。
私事、今回10月に熊本への転勤が決まり、また、月末、半期決算の多忙につき、ニュース、スポーツ新聞とも見られずに、あわてて関連記事の拾い読みの最中です。
いつも貴方のブログには泣かされます。
勝手に王さん最期のユニ姿と決め付けて9月上旬に見に行く計画でしたが、それも行けず、5月の観戦が最期となってしまいました。
残念ですが、本当にありがとうございましたと言いたいですね。
それにしても、王さんの胴上げ姿は本当に美しい!
yahooドームもちょっと近くなるので、来期の息子達の奮闘を間近で見守りたいと思います。
投稿者 もび : 2008年09月27日 11:15
かんけ さん
レスが遅くなって申し訳ありません。
初コメントありがとうございます♪
今後もよろしくお願いしますね。
10/7最終戦、仙台でもセレモニーを予定してくれているようですね。有り難いお話しです。
平日でなければ、私も仙台に行きたいところですが…(苦笑)
そういや西武ドームで清原も胴上げをしてもらってましたね。
敵味方関係なく、ゲームを離れればお互いを称え合う、こういうのは見て気持ちの良いものです。
当日、全国のHawksファンの分まで、王Hawksへの最期の応援と、王さんへの感謝の念をよろしくお願いします。
投稿者 HiRO@zetton05 : 2008年09月30日 16:18
もび さん
初コメントありがとうございます♪
来季から少しは福岡ドームへ行きやすくなるとのこと、良かったですね!
来季はもう、グラウンドで王さんの姿を見ることはできませんが、王さんへの感謝の念を忘れず、そのご恩に報いるためにも、Hawksをしっかり応援していきたいものですね。
今後ともよろしくお願いいたします。
投稿者 HiRO@zetton05 : 2008年09月30日 16:35